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松井秀喜選手と
OPS

20071014

宇佐美 保

 ヤンキースは、残念ながら地区シリーズで早くも敗退してしまいました。

そして、nikkannsports.com20071010日)には次の記事が載りました。

 

松井が敗因?放出望む声41

 9日付のニューヨーク・デイリーニューズ電子版は「ヤ軍から誰が出て行き、誰が残留すべきか」の投票を開始した。投票ページにはトーリ監督、A・ロッド、クレメンスらに松井の名もあり、ページ更新から数時間後の途中経過は、松井放出を望む声は41%とリストアップされた10人の中で5番目。また同日付のニューヨーク・ポスト電子版は「このシリーズでの松井の不調は打線を象徴していた」と大きな敗因に挙げていた。

 

最終戦などでは31死二塁で一ゴロ。51死一塁では、初球をショートに打ち上げてしまって、ヤンキースファン全員はがっくりと肩を落としたことと存じます。

(勿論、私もそうでした)

 それでも、ヤンキース敗退の原因として、松井秀喜選手の不振が挙げられているのが残念で溜まりません。

 

確かに、松井秀喜選手のバットは湿り切っていましたが、この原因は当然彼の膝の痛みだと信じます。

 

松井秀喜選手は、プロ野球入団以来、当時の巨人軍監督長嶋茂雄氏に連日(自宅にまでも呼ばれて)ティングフォーム伝授されてきたと言うのですから、(一時代前なら、ジョー・ディマジオらの如く活躍できたかもしれませんが)当然ながら現在の大リーグのバッティングに適さないわけです。

A・ロドリゲス(愛称:A・ロッド)選手は別格としても、アブレイユ選手、デーモン選手など身近に素晴らしいお手本がいるのに何故彼らの優れた点を取り入れないのでしょうか?

更には、松井稼頭央選手、岩村明憲選手らのフォームの方が、松井秀喜選手のそれより理にかなっているように思えるのです。

松井秀喜選手は、あまりに人間が立派なので、大恩ある長嶋氏の教えを捨て去る事が出来ないのでしょうか?

 

 しかし、7月に月間MVPを獲得するほどに松井秀喜選手のバットは爆発しました。

この期間だけは、松井秀喜選手のバッティングフォームは完全なものに近付いていたのだと存じます。

でも、その打法を完全に自分のものにすることなく、又、元の長嶋氏直伝のバッティングフォームにいつしか戻っていたのでしょう。

膝が故障していなければ、松井秀喜選手の稀有の才能が、どんなバッティング・フォームであれそこそこの成績を上げることに寄与は出来たでしょうが、残念でした。

そして、もっと私が残念に思う事は、松井秀喜選手の巨人軍時代の監督が現ホークス監督の王貞治氏であったら、7月の爆発的なバッティングをシーズン通して発揮してくれていたと思うのです。

 

この松井秀喜選手の打撃術に関しては、機会がありましたら別文にて記述したいと存じております。

 

 しかし、なんと言っても、

この地区シリーズで松井秀喜選手はヤンキースの中で、出塁率は438厘でチームトップ

だったのです。

 

 それは単に出塁率だけの問題ではありません、松井秀喜選手は、チャンスに打順が回ってきても、きちんとボールを見極めボールに手を出さずに、対戦投手に沢山投球させた上、四球を選んで出塁していました。

大事な最終戦に於いてもそうでした。

(例の初球打ちのショートフライは、初球に絶好球が来たのを打ち損じたのだと存じます)

A・ロッド選手もポサーダ選手も、何が何でも、俺が決めたいとの気持ち(欲)から、絶好機にボール球に手を出して三振していました。

今年の地区シリーズに於ける松井秀喜選手のプレーをトーリ監督は評価していた筈です。

 

 でも、そのトーリ監督は、来年もヤンキースの監督を務められるか否かが心配されています。

だとすると、松井秀喜選手はトレードに出されるかもしれません。

確か、

今シーズン中、松井秀喜選手が不振の際、“緑色のユニホームのチームにトレードされた夢を見た”と語っていたように思うのですが(私の記憶はすっかりいい加減になってしまいましたので、間違っているかもしれません)この緑色のユニホームのチームは、オークランド・アスレチックスです。

 

 若しかしたら、正夢だったのかもしれません。

なにしろ、大多数の方々にはふがいなく思えた今地区シリーズでの松井秀喜選手の活躍をアスレチックスのゼネラルマネジャー(GM)のビリー・ビーン氏は最大限に評価されると私は思うからです。

 

 何故かと申しますと、日頃愛用しているスピーカーの輸入元のホームページを訪ねさせて頂いたら、『マネー・ボール(マイケル・ルイス著)』を称賛されておりました。

そこで、直ぐに購読したところ、

アスレチックスのビリー・ビーン氏は、
出塁率と相手投手に沢山のボールを投げさせ能力を評価されている

と書かれていたからです。

 

 そして、丸谷才一氏はこの書の解説を次のように締めています。

 

 マイケル・ルイスが書いたものは頭の使ひ方、ものの考へ方の本だった。一般に人間はとかく在来の考へ方、方式にとらはれがちで、新しい視角からものを見ることができない。その分野その領域の、約束事や先例や旧套、因襲や官僚主義から脱するのがむづかしい。つまり他人と同じことをする羽目になって、その結果、これまでの勝者を抜くための条件を手に入れがたい。

 しかしものの考へ方を改めれば話が違ふ。別の天地が開け、新しい勝者となる可能性が生じる。さういふ、思考と生き方のためのマニュアルを彼は書いた。

 ですから、『マネー・ボール』はいろんな世界で応用がきく。科学者が読んでも頭が刺激されるし、デザイナーが手に取つても参考になる。まして経済関係の人には非常に有益だらう。マーク・ガーソンといふ銀行家はこの本を許して、「単にマイケル・ルイスのベスト・ブックであるだけではなく、これまでに書かれた最上のビジネス・ブック」と言つたさうだが、これは決して褒めすぎではない

 

 私には、丸谷氏の“ものの考へ方を改めれば話が違ふ。別の天地が開け、新しい勝者となる可能性が生じる”に記述には賛同します。

なにしろ私が今進めている電磁気学の研究(『コロンブスの電磁気学』)は、“電流は、プラス/マイナスの電荷が運ぶ”、を完全に捨て去る事で、電気の各分野での別天地が開けているのですから。

しかし、先の拙文《イチロー選手は凄いけど松井選手はより凄い(10月7日改)》で、新たな選手評価法として「獲得塁率」を導入して、「松井秀喜選手のイチロー選手に対する優位性」を証明した私としては、丸谷氏の最後の“これは決して褒めすぎではない”には賛同しかねますので、この本の中の記述を少し考察してみたいと存じます。

 

先ずは、2002年アメリカン・リーグ西地区の順位と年俸は次のようであったと記述されていました。


チーム名 勝ち数 敗け数 ゲーム差 総年俸($)
アスレチックス 103

59

41,942,665

エンジェルス 99

63

4

62,757,041

マリナーズ 93

69

10

86,084,710

レンジャーズ 72

90

31

106,915,180


 

 これは本当に不思議な結果です。

この結果は『マネー・ボール(マイケル・ルイス著)』の主役アスレチックスのGMであるビリー・ビーン氏の新しい選手評価法の採用によってもたらされたのでした。

 

 そしてこの本には、ビリー・ビーン氏の新しい選手評価法を紹介してくれています。

先ずは、先にも記述しましたが「出塁率と長打率」を重視している事です。

この点が次のように記述されています。

 

 ポール・デポデスタがビリー・ビーンに請われてフロント入りしたのは1999年のシーズン前だったが、彼はそれよりだいぶ以前から、勝利の要因を研究していた。ハーバードを卒業してまもない1990年代なかば、20世紀のあらゆる球団のさまざまなデータを数式に当てはめて、勝率と関係が深いデータはどれなのかをさぐった。重要なデータはふたつしかないことが判明した。どちらも攻撃面のデータ。出塁率と長打率だ。

ほかの数値はすべて、きわめて重要性が薄い。

 

 この点は、私の大好きな松井秀喜選手が正当に評価されるので(エコヒイキ的かもしれませんが)納得するのです。

でも、次の記述には納得できません。

 

 その後、アスレチックスに合流して少し経ったころ、ポールは新たな疑問にかられた。出塁率と長打率はどっちがどのぐらい重要なのだろう? ひとまず頭のなかで考え

てみる。チームが出塁率10、すなわち全員が全部出塁と仮定すると、何点入るか?

もちろん無限大だ。いつまで経ってもアウトカウントが増えない。では、長打率が10、つまり打者ひとりにつきひとつずつ進塁と仮定すると、何点取れるだろうか? 状況によって変わってくるが、無限大よりずっと小さいことはまず間違いない。たとえば、lイニングに打者を4人送り込んだとする。最初の打者がホームラン、続く3人がアウト。4人で進塁4つだから長打率10割になるけれど、たった1点しか入らない

 

 この見解は、全く間違っています。

なにしろ、「出塁率10」は純粋に「満点である10割」でアウトになる事はありませんが、「長打率10」では、ここに記されているような結果になってしまいます。

それは、「長打率10」は満点ではないのです。

長打率」の満点は(本文中の「注」にも若干触れていますが)あくまでも、全打席ホームランの場合であって「10」ではなく「40」でなくてはならないのです。

ですから、単純に「出塁率」と「長打率」の数字を比較して、その両者の優劣を論じるのはナンセンスです。

 

 更に、「新しい評価基準、OPS(出塁率プラス長打率)」に関して、次のように記述されています。

 

 

 ちょうどそのころ、野球ファンやアナウンサーがしだいに出塁率や長打率に関心を向け始めていた。ジェイムズたちが作った新しい評価基準、OPS(出塁率プラス長打率)がとりわけ脚光を浴びたOPSとは、出塁率と長打率をたんに足し算したものだ。いやに単純な感じがするものの、チームの得点機会を表わす数字としてこれほどふさわしいデータは従来なかった。もっとも、ただ合計するということは、両者を等しい価値とみなしていることになる。OPSを向上させるためには、長打率を上げても出塁率を上げても、どちらでもかまわない。

 

 この「OPS」については、週刊文春で「大リーグファン養成コラム」を連載している李啓充氏は、次のように記述していたと存じます。


表:1OPS
0.7台の選手 平均的な選手
0.8台の選手 オールスター級の選手
0.9台の選手 スーパースター級の選手

 

 そこで、松井秀喜選手のチームメートとライバルチームの強打者(オルティス)と、イチロー選手、アスレチックス期待のチャベス選手の大リーグ通算成績(OPS)をMLB.COMで調べてみました。

(尚、この表での「AsOPS」は、次の記述に出てくる「出塁率と長打率に31の比重を与えればいい」に従って、「出塁率」×3+長打率」の値を計算した結果です)

 


表:2 大リーグ通算成績

選手名

所属チーム

出塁率

長打率

OPS

AsOPS

四死球率

松井秀喜

ヤンキース

.371

.485

.856

1.598

0.123

A.ロッド

ヤンキース

.389

.578

.967

1.745

0.124

ジーター

ヤンキース

.388

.462

.850

1.626

0.102

デーモン

ヤンキース

.353

.433

.786

1.492

0.100

アブレイユ

ヤンキース

.408

.500

.908

1.724

0.185

ポサーダ

ヤンキース

.381

.479

.860

1.622

0.159

イチロー

マリナーズ

.379

.437

.816

1.572

0.07

オルティス

レッドソックス

.384

.559

.943

1.711

0.154

チャベス

アスレチックス

.347

.486

.833

1.527

0.121


 このOPSの結果から、A.ロッド、アブレイユ、オルティス選手がスーパースターである事が分ります。

そして、松井秀喜選手はヤンキースの面々と肩を並べているのが分ります。

(地区シリーズの結果で、松井秀喜選手のレフトの守備位置を奪ったと噂されるデーモン選手の成績が、又、イチロー選手の成績が松井秀喜選手のそれに遠く及ばない事が分ります)

 

 書物の記述を続けます。

 

 本当にそうだろうか、とポールは疑問に思い、先に挙げたような考察をしたわけだ。

そして、等価と見るのはおかしいと結論した。長打率を上げるよりも、出塁率を上げるほうが、どう考えても重要にちがいない。しかし──重要性の比重はどのぐらいだろう? ジェイムズが得点公式≠導いたときと同じように、ポールは当てずっぽうに数式を作っては、データを代入してみた。試行錯誤の末、いままでになく正確にチームの得点力を表わせる数式を発見した。出塁率と長打率に31の比重を与えればいい

 セイバーメトリックスの観点から見てさえ、ポールの結論は大胆だった。ジェイムズらはたしかに出塁率が大切だと説いたけれど、長打率の3倍も大切だとは言っていない。比重を工夫するとしても、せいぜい1.51だった。まして、メジャーリーグ内部ではセイバーメトリックスほど出塁率が重視されていなかったから、ポールの主張は異端だった。

 ポールは仕事部屋を出て、廊下をへだてて向かい側にあるビリーの執務室へ報告しにいった。近年になく画期的な情報だな、とビリーは喜んだ。異端でもかまわない。異端とはチャンスを意味する。出塁の才能は、ほかの能力にくらべて著しく過小評価されているのだ。四球による地味な出塁となればなおさらだろう。守備能力や足の速さは忘れていい。打率よりも出塁率が、アウトにならない確率が、なによりだいじなのだ。野球チームの成功に最も寄与する技能は、どんなかたちであれ出塁することだ。以後、アスレチックスのフロントは、出塁率に異常なほどこだわるようになつた

 

 しかし不思議ではありませんか!?

出塁率」と「長打率」を足し合わした数字「OPS

が選手を充分に評価できるなんて、どんな根拠があるのでしょうか?

その上、アスレチックスでは、「出塁率と長打率に31の比重を与えればいい」との根拠があてずっぽうで、データを代入してみた。試行錯誤の末に出てきた結果だなんて!?

こんな数式信じる事が出来ますか!?

 

 でも、ある程度信じる事が出来るのです。

その根拠を次に述べて行きます。

 私が、後楽園球場へ青バット、赤バットの大下弘選手、川上哲治選手らを応援に行っていた頃は、打撃成績は、打率と、ホームラン数で評価されていました。
長打率もあったのかもしれませんが、「出塁率」など聞いた事はありませんでした。
そもそも、打者の任務は、あくまでもバットを振ってボールをかっ飛ばす事と認識されていたのです。
四死球は、(100%投手の責任で)打者の成績には加味されていなかったのです。
従って、打率にしても、長打率にしても、それらを評価する際は、死四球を完全に除外して評価していましたので、打数(打った数)を基準にしていたのです。
(バンドなどの犠打も打者がヒットを打とうとした打席ではないので、この数も打数から除外します)

 即ち、

打数=打席数(打者が打席に立った数)−四死球数−犠打数

だったのです。

 ですから、当時最も注目されていた打率は、

「打率=(ヒット数)÷(打数)」

と規定されています。


 そして、この(ヒット数)は、(単打(1塁打)数)2塁打数)、(3塁打数)(ホームラン数)を合算した数ですから、「打率」は次のように書き直せます。


「打率」
分子=(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数)
分母=(打数)


 しかし、「打率」だけでは、例えば、10打数のうちで、「単打(1塁打)」だけを3本打った場合も、「2塁打」だけを3本打った場合も、はたまた「3塁打」だけを3本打った場合も、更には、なんと「ホームラン」だけを3本打った場合も、同じ、3割(=3÷10)と評価されてしまいます。

 これではチョコチョコと、ヒットとして単打数だけを稼ぐ打者と、2塁打も3塁打もホームランも沢山の長打を含み同じヒット数を打つ打者とは、同じ評価となってします。

 そこで、同じヒットでも、「単打(1塁打)」、「2塁打」、「3塁打」、「ホームラン」の価値を変えて評価する必要が生じてきます。

 ですから、単打に比べて、「2塁打」、「3塁打」、「ホームラン」の価値を、それぞれの獲得塁数に比例して、2倍、3倍、4倍の価値に高めて計算しなおした打率が長打率です。

 ですから、「長打率は、次のようになります。
(但し、「長打率」の場合も、「打率」同様に、四球が打者の成果と認知されていませんから、死四球数等を除外した「打数」を基準にして評価しています)


長打率は、

分子=(単打数)×1+2塁打数)×2+3塁打数)×3+(ホームラン数)×4
分母=打数


 ところが、最近になり四球は打者の重要な成績、成果と認識されるようになり、「出塁率」が脚光を浴びてきたのです。
この「出塁率」は、四球は打者の成果とするのですから、その評価基準は、打率等の「打数」ではなく「打席数」そのものを基準にして評価されなくてはなりませんから、次のようになります。

 

出塁率

分子=(四死球数)+(ヒット数)

分母=打席数

 

 そして、(ヒット数)=(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数)ですから、「出塁率」は次のように書き直せます。

出塁率」は
分子=(四死球数)
+(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数)
分母=打席数

 

 

 

 そして、このように評価基準の異なる「出塁率」(打席数が評価基準)と「長打率」(打数が評価基準)と、を加算して「OPS」とするのですから、強引と言えば強引な話しです。
(但し、強引は強引ですが、この強引さから思わぬ妙も生じます。
この件は文末の(補足:1)にて触れたいと存じます)

 即ち、「出塁率」と「長打率」では、分母が「打席数」と「打数」と異なっています。


それらの間には、先にも書きましたが、次の関係があります。

打席数」=「打数+「四死球数」+「犠打数」


 しかし、(「四死球数」+「犠打数」)の値は、表:2(四死球率だけを次に再掲します)を見ても分りますように、

表:2の四死球率を再掲します
松井秀喜 A.ロッド ジーター デーモン アブレイユ ポサーダ イチロー オルティス チャベス
0.123 0.124 0.102 0.100 0.185 0.159 0.07 0.154 0.121


打席数」の
12割弱程度ですから、(打席数」=「打数」×(1+0.1〜0.2))打数

OPS」の概略を理解する為、これまた強引ですが、次のように仮定します。

打席数」=「打数

(この省略をしないでの考察は、文末の(補足)にて展開します)

 

 この仮定のもとに、「OPS」に於ける、「出塁率」と「長打率」の分母を「打席数」にて共通化しますと、

分子を次のように書き換える事が出来ます。

OPSの分子=(四死球数+(単打数)×2+2塁打数)×3+3塁打数)×4+(ホームラン数)×5


 ここで、比較の為に、先ほど掲げた「長打率の分子をもう一度次に掲げます。

長打率の分子=(単打数)×1+2塁打数)×2+3塁打数)×3+(ホームラン数)×4


 この両者を、見比べると、次の点が、直ぐにわかります。

OPSの分子
は、長打率の分子」に(四死球数)を加えた上に、長打率の分子」中の各(塁打数)に掛かっている係数に、各々「
1」の下駄を履かせただけである事が分ります。
(この件を次の表に纏めます)

表:3 各項に掛かる係数
長打率算定時の係数 下駄分 OPSの係数
四死球数 1
単打数 1 1 2
2塁打数 2 1 3
3塁打数 3 1 4
ホームラン数 4 1 5



(この下駄を取れば、この分子は、拙文《イチロー選手は凄いけど松井選手はより凄い(10月7日改)に記述しました「獲得塁数」という、単純な値となります

 

 しかし、これでは、(四球数)を重視するアスレチックスのGMビリー・ビーン氏らは、

何故、(四死球数)だけ下駄をはかさないのか!?と不満の声を上げるでしょう。

 

 ですから、アスレチックスのフロントのポール・デポデスタ氏が、「出塁率と長打率に31の比重を与えればいい」と提案するのです。

 

この状況では、「出塁率」を3倍しますから、

「アスレチックス版OPS」の分子は次のようになります。

 

(四死球数)×3+(単打数)×4+2塁打数)×5+3塁打数)×6+(ホームラン数)×7

 

ここで、この分子を3で割りますと、各項に掛かる係数は次のようになります。

表:4 各項に掛かる係数
アスレチックス版OPS 従来のOPS
(四死球数)に掛かる係数 1 1
(単打数)に掛かる係数 4/31.33 2
2塁打数)に掛かる係数 5/31.6 3
3塁打数)に掛かる係数 6/32 4
(ホームラン数)に掛かる係数 7/32.33 5


 

 確かに、この「アスレチックス版OPS」では、(四死球数)の「OPS」への寄与率は、各ヒット数のそれに対して増大しますが、(ホームラン数)の寄与率は大幅に減少します。

従来方法の「OPS」に於ける、(ホームラン数)の寄与率は5であって、
「単打数」の寄与率
2に対して、
2.5倍(=5/2)しかないのでも私は不満なのですが、

「アスレチックス版
OPS」では、
(ホームラン数)の寄与率(
2.33)は、
(単打数)の寄与率(
1.33)に対して、
1.75倍(=2.33/1.33)でしかありません。

 

文末の(補足:1)で省略なしで計算しても、(ホームラン数)の寄与率(3)は、(単打数)の寄与率(1.38)の2.17倍(=3/1.38)でしかありません。

 

 なのに、書物中には、次の記述があります。

 

 いままで投手の責任と見られていた部分が、じつはただの運なのではないか?

 

 150年のあいだ、グラウンド内のフェアゾーンへ飛んだ打球(つまり、ファウルとホームラン以外の打球)が安打にならないようにするのは投手の能力だと評価されてきた。ヒットを多く許す投手は防御率が悪くて負け数が多い、ヒットをあまり打たれない投手こそすぐれている、と見られてきた。だが、ボロス・マクラッケン──遠からず法律事務所を辞めて、アリゾナ州フェニックスで両親とともに暮らすことになる若者──の結論は違った。ホームラン以外のフェアボールは、ヒットになろうとなるまいと、投手の責任ではない。もちろん、ホームランを防ぐことはできる。四球を防ぐこともできる。三振に取って、打球がグラウンドへ飛ばないようにすることもできる。しかし逆に言うと、それしかできない。・・・

ホ−ムラン以外のフェアボールを安打にしない能力は、どのメジャーリーグ投手も大差ない》・・・

本当に意味のあるデータとは、与四球、被本塁打、奪三振などだ。・・・

ゴロなら、フェンス越えしないのはもちろん、二塁打や三塁打になりにくい

 

 この記述から、ホームランの効果が抜群なのが先ず分ります。

そして、「ホームラン以外のフェアボールは、ヒットになろうとなるまいと、投手の責任ではない」というのですから、打者側から見ても“「ホームラン以外」は、「三振」しなければ時の運”ということになりましょう。

 

 しかし、テレビ解説者たちは、“良い当たりをすれば、必然的の打球は野手の居ない所に飛んで行きヒットになる”と日頃発言していますから、アスレチックス見解には異論を唱えるでしょう。

それにしましても、「単打」の場合は、当たりが良かろうが良くなかろうが、運不運が大きく関与しましょうが、「2塁打」、「3塁打」では、多くの場合は当たりが良くなくては困難ではないでしょうか?

 

 

このように考えますと、
(単打数)に掛かる係数を下げ、
他の(
2塁打数)、(3塁打数)、(ホームラン数)に掛かる係数を
上げてやる必要があるのではないでしょうか?

 

 となりますと、次のように単純化されるかもしれません。

表:5 各項に掛かるべき係数
単純化されるOPS 従来のOPS アスレチックス版OPS
(四死球数)に掛かる係数 1 1 1
(単打数)に掛かる係数 1 2 4/31.33
2塁打数)に掛かる係数 2 3 5/31.6
3塁打数)に掛かる係数 3 4 6/32
(ホームラン数)に掛かる係数 4 5 7/32.33


 

 ここに私が掲げた単純化されるOPS「改訂版OPS」)は、単純に、(四死球数)の存在価値を認め、従来の「長打率」計算の際の分子に「四死球数」を加え、分母を「打数」から「打席数」に変更すればよいのです。

 

 この私が提案する「改訂版OPS」を次の表に、従来方法の「OPS」並びに、「アスレチックス版OPS」(但し、数字が大きくなるので全体を3で割りました)を掲げます。

表:6 大リーグ通算成績

選手名

所属チーム

従来OPS

AsOPS/3

提案する
改訂版
OPS

四死球率

三振率

松井秀喜

ヤンキース

.856

0.533

0.542

0.101

0.127

A.ロッド

ヤンキース

.967

0.582

0.625

0.111

0.184

ジーター

ヤンキース

.850

0.542

0.512

0.093

0.158

デーモン

ヤンキース

.786

0.497

0.485

0.091 0.108

アブレイユ

ヤンキース

.908

0.575

0.578

0.156

0.186

ポサーダ

ヤンキース

.860

0.541

0.551

0.137

0.204

イチロー

マリナーズ

.816

0.524

0.472

0.041

0.057

オルティス

レッドソックス

.943

0.570

0.618

0.134

0.185

チャベス

アスレチックス

.833

0.509

0.565

0.108

0.170


 この結果から、アスレチックスのGMビリー・ビーン氏期待のチャベス選手が(彼のホームラン数の多さから)松井秀喜選手を追い越します。

そして、私がここに掲げた「改訂版OPS」が認知されてしかるべきと思うのです。

 

 そして、この表を見ると、イチロー選手が大変見劣りする事が分ります。

確かに、「三振率」は抜群に優秀ですが、四死球率の少なさは眼を覆いたくなります。

この点からも、イチロー選手は、チームの勝利よりも、自らの安打数の獲得に専心しており非難を浴びるのも無理も無いと存じます。

(この件も、拙文《イチロー選手は凄いけど松井選手はより凄い(10月7日改)》をご参照下さい。
又、四死球率、三振率は、打席数を基準として計算しました)

 

 更に、書物には次の記述があります。

 

危険を伴う盗塁という攻撃方法はアスレチックス野球に似合わない。盗塁すれば戦況が変わる半面、約30パーセントの盗塁は失敗に終わる。

・・・

凝り固まった野球戦略の大半をばかばかしいと立証してみせた。バント、盗塁、ヒットエンドラン。いずれも自滅行為に近く、すべて共通の意図を持っている。恥をかくのを避けたい、という意図だ。「監督は、一番効果的な作戦ではなく、一番失敗の確率が低い作戦を取りたがるのです」とパーマーは説明する。「最良の策を取って得することよりも、裏目に出て恥をかいたら嫌だということばかり意識しているわけです」

 

 

 しかし、次のような記述もあります。

 

ワッシュが言う。「このチームには掟がある。独断で走っても、成功なら許される。失敗なら、とてつもない代償を払わされる」まるでビリー・ビーンが悪魔だとでも言いたいかのようだ。

・・・

足を重視しないとなると、選手はベースランニングの基本を忘れてしまうんだ」とボズ。

「まったくだよ」とワッシュが相づちをうつ。「三塁コーチボックスにいるわたしの隣で試合を眺めるといい。このチームの選手は誰ひとり、一塁から三塁への走りかたを知らない」打球がフェンスに達するたびに、三塁コーチボックスのワッシュは、常識とは異なる速度計算を強いられる。

(注:ワッシュはアスレチックスの内野守備コーチで年間57盗塁を記録している、ボズは同打撃コーチで年間90盗塁を記録している)

 

 アスレチックスが盗塁を仕掛けてこないとなると、対戦投手の投球は楽になります。

クイックモーションにそれほど気を遣わなくても済みますし、打者への配球もストレート主体ではなく緩い変化球など織り交ぜた通常通りの配球で良くなり、バッターの読みを外すのも有利になります。

 

 従って、先の拙文にも記述しましたが、

盗塁はそれなりに評価して、失敗分を差し引くべきです。
又、バンド等の犠打は、自分はアウトになっても前の打者を進塁させているのですから、
この分も正当に評価されてしかるべきです。

 

但し、これらの寄与分の係数を(四死球数)並みの1にするのか、それより小さな値にするのかは、改めて検討するのも良い事だと存じます。

それに加えて、(四死球数)寄与分1に対する、(単打数)、(2塁打数)、(3塁打数)、(ホームラン数)寄与分を(1234)以外の値として検討することも良い事だと存じます。

勿論、その際の分母も当然、「打席数」とすべきです。

 

 

 更に、この書物の中で気になったのは次の記述です。

 

チャンスに強い打者についてある仮説を立てた〜そんな打者は存在しないと。実況中継のアナウンサーがなんと言おうと、監督がどう信じようと、メジャーリーガーがだいじな場面で普段より打つ(あるいは逆に打たない)などということはありえない。この仮説は、なるほど納得のいく要素もある。プレッシャーがかかって急にいつもとようすが変わるような選手は、そもそもメジャーリーグまでたどり着けないはずだ。だが一方、野球通が信じてきた聖なる俗説とは矛盾する。通常の感覚と違うだけに、クレイマーはかえって喜んだ。「プレッシャーのかかる場面でどう感じ、どう対処するか。一般人とメジャーリーガーでは異なるわけです」とにかく、この仮説に真っ向から反論することは不可能だった。クレイマーが検証した結果、場面によって選手が普段と違う状態になるという証拠はほとんどなかった(ごくわずかな例外はある。一部の左打者は、右投手より左投手のとき分が悪い。一部の右打者は、左投手より右投手のほうが分が悪い)。

 

 更には、ビリー・ビーン氏の非難の言葉が記述されています。

 

ちっ。なぜだ? どうしてみんなばかのひとつ覚えみたいに、右対左をぜったいに避けようとする?・・・」

 

 このビリー・ビーン氏の見解に私は賛同します。

尊敬するトーリ監督でさえも、このビリー・ビーン氏の非難の対象となるのが悲しい事です。

 

 それにしましても、

この書物は、大打者A.ロッド選手がヤンキースに移籍される前に書かれたのでしょう。

現在のヤンキースに於けるA.ロッド選手の活躍状況を見れば
プレッシャーがかかって急にいつもとようすが変わるような選手は、
そもそもメジャーリーグまでたどり着けないはずだ
」は意味を失います。

 

 A.ロッド選手の500号ホームラン前の足踏み状態、オフシーズンでの不甲斐なさを見れば、「チャンスに強い打者についてある仮説を立てた〜そんな打者は存在しない」もこの書物から抹消されなければならない筈です。

 

 更に、次のビリー・ビーン氏の見解にも私は賛同いたします。

 

 チームがプレーオフで勝てなくても、ビリー・ビーンは意外に冷静だった。第2戦の開始前、どうしてそんなに超然としていられるのか──例の白い小型機器を持って駐車場を歩き回ったりしないのか──とたずねたところ、こんな返事が返ってきた。「わたしのやりかたはプレーオフには通用しない。わたしの任務は、チームをプレーオフまで連れてくることなんだ。そのあとどうなるかは、たんなる運だ

 

 このビリー・ビーン氏の見解に大筋私は納得します。

 野球には、「タラ」、「レバ」は無い!と野球解説者達は言っていますが、好投手チェンバレンを襲った虫の大群は、不運の見本たんなる運だ」の典型的な例)と存じます。

(朝日新聞(2007107日)の記事を引用させて頂きます)

 

 

 ヤンキースに思わぬ敵が待っていた。虫だ。1点リードの8回、マウンドの新人右腕チェンバレンを苦しめたのは、相手打線ではなかった。

・・・

 選手のまわりを無数の小さな虫が飛び回った。手や帽子で追い払っても追いつかない。ベンチから届けられた防虫スプレーも効果がない。若いチェンバレンは集中力を失った。先頭サイズモアをストレートの四球で出し、次打者の初球が暴投。犠打で1死三塁とされ、2死後に再び暴投。無安打で同点を許した

 

 そして、この時、チェンバレン投手は、前が見えない状態で投球せざるを得なかったそうです。

 

 こんな虫がチェンバレンを襲わなかったら、その試合でヤンキースは勝利し、勢いに乗り地区シリーズを勝ち抜いていたかもしれません。

 

(野球には、「タラ」、「レバ」が居なくても、この時の「ムシ」の存在は「無視」できない事です)

 

 更に、最終戦で、王建民投手の投じたボールは、打者のバットに当たっていたのに、球審は「デッドボール」と誤審しました。

この誤審が無ければ、王建民投手は、その後立ち直ってヤンキースは勝っていたかもしれません。


 それでも、最近の成績を22戦21勝との好成績を上げながら、ワールドシリーズへ向けてロッキーズが駒を進めましたが、これは「たんなる運」だけでもないのではないでしょうか?

 

 テレビで、松坂投手の次の談話を紹介していました。

 

 

こんな地区シリーズなど大事な時でも、レッドソックスのロッカールームは賑やかで足音などは全く聞こえないのに、ヤンキースのロッカールームは足音だけが聞こえるほどに静かだ。

 

 ニューヨーク・メッツ時代苦しんだ、ロッキーズの松井稼頭央選手も、ロッキーズの選手達の明るさを喜んでいました。

巨大な力を振り回すオーナーやヤンキースファンの心変わりの早さが、ヤンキースの面々に大きなプレッシャーをかけている事は確かではないでしょうか?

少なくとも、A.ロッド選手に!

 

 更には、この書物の中で、現在レッドソックスで活躍している「ユーキリス選手」をドラフト当初からアスレチックスが注目していた件が書かれていて、ビリー・ビーン氏の鑑識眼の確かさを納得させられます。

 

 昨年のドラフト8位指名。アスレチックスのスカウト陣が見逃していて、ポールのパソコンが発掘した、最初の大学生選手。頭の古いスカウトたちが最後の抵抗を見せさえしなければ、2001年のドラフトでアスレチックスが3位指名しているはずだった

2001年のジュレミー・ブラウン″だったのだ。いま彼は2Aでおおいに活躍し、メジャー昇格への道をひた走っていた。四球を選ぶことと対戦投手を疲れさせることにかけて、世界記録を打ち立てそうな勢いだった。

 クリフ・フロイドに関してミナヤ(注:エクスポスのGM)と話し始めたいちばん初めから、ビリーが追いかけていたのはユーキリスだった。

 ミナヤはユーキリスが誰なのか知らない。

「ケビン・ユーキリスという名前でね」とビリーが一応言い添える。「無名選手さ。2Aにいる太っちょの一塁手だ」2Aにいる太っちょの一塁手で、四球を選ぶのが神業的にうまい。おまけに去年あたりから、パワーをつけ始めた。四球の神様は、いまやときどきホームランも打つようになった。四球を多く取る打者なら、当然のことだ。

・・・

 ビリーの思いはまだユーキリスのまわりをさまよっている。レッドソックスから言われるであろう言葉を想像する。レッドソックスは当然、ミナヤではなくビリーがユーキリスを欲しがっていると見抜くだろう。過去、ユーキリスをトレードで獲ろうとした人物はビリーしかいないからだ。それに、レッドソックスのアシスタント・ゼネラルマネジャーを務めるセオ・エプスタインがビリーと頻繁に会話しているので、ビリーの考えはある程度筒抜けだ。エプスタインはエール大学卒の28歳。メジャー球団のゼネラルマネジャーをめざしていて、もし夢が叶ったらどこのゼネラルマネジャーをお手本にした

いか、はっきりと決まっている。つまり、レッドソックスがビリーのやりかたを真似て、四球を選ぶ太っちょを大切にし始めるのは、もう時間の問題だ。だとしても、今回はユーキリスを放出するだろう、とビリーは踏んでいる。

 しかし彼は知らなかった。セオ・エプスタインの権限が近ごろ急に大きくなっていることを。レッドソックスの新しいオーナーであるジョン・ヘンリーが、エブスタインの意見をすべて聞き入れていることを。ケビン・ユーキリスはまもなく、レッドソックス二軍の象徴的存在になろうとしていた(「あと3カ月早かったら、ビリーはユーキリスを獲得できたでしょう」とエプスタインは言う)。

 

 更に、

ビリー・ビーン氏に期待されて入団した旨が記述されている
「ニック・スウィッシャー選手」の大リーグでの活躍ぶりを見ますと、
「アスレチックス版
OPS/3」が0.516と、イチロー、デーモン選手の上を行き、
四死球率は
0.161ですから、先の表に掲げて選手の中では、
アブレイユ選手の次に相当する好成績です。

 

 もう一人の注目選手だった、先の記述にも出てくる「ジュレミー・ブラウン選手」は、2006年のみ(?)に大リーグの5試合に登場して、10打席で3安打(うち、2本の2塁打)と四球が1とアスレチックスのホームページで見る事が出来ました。

(今は、マイナーリーグで満を持しているのかもしれません)

 

 でも、この書を読んで一番不思議に思ったのは、現在もビリー・ビーン氏はアスレチックスのGMと活躍されているのに、彼本人なら兎も角、別人が、彼の秘術(トレードに於ける交渉術なども)公開してよいのか?と疑問に感じたのです。

 

 なにしろ、ビリー・ビーン氏の評価が高かったユーキリス選手を、レッドソックスのGMエプスタイン氏はビリー・ビーン氏の感化を受けたが為手放さなかったのですから。

それにしましても、現在レッドソックスで大活躍中の岡島秀樹投手をどのような基準で獲得されたのでしょうか?

三振奪取率なのでしょうか?

 

 松坂大輔投手の日本での通算三振奪取率は、0.966/イニングに対して、

岡島投手のそれは、1.06/イニングだったのですから。

 

 (尚、大リーグでの今シーズンでは、松坂投手が0.982/イニングに対して、岡島投手のそれは、0.913/イニングでした)

 

 

 

(補足:1

 

本文中では、「OPS」を

打席数」≒「打数

と看做(みな)して考察しましたが、ここでは、このような省略なしで「OPS」を考察します。

 

そこで、

OPS」=「出塁率+長打率

 

ですから、「OPS」は次のようになります。

 

((四死球数)+(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数))÷(打席数)
+
((単打数)×1+2塁打数)×2+3塁打数)×3+(ホームラン数)×4)÷(打数)

 

 ここで、分母を(打席数)で共通化しますと、分子は、「長打率分の分子」に((打席数)÷(打数))が掛け算され、次のようになります。


OPS」の分子
出塁率分の分子 (四死球数)+(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数))
長打率分の分子 ((単打数)×1+2塁打数)×2+3塁打数)×3+(ホームラン数)×4))
×((打席数)÷(打数))


 

「打席数」と「打数」では、次の関係があります。

 

「打席数」=「打数」+「四死球数」+「犠打数」

従って

「打席数」÷「打数」=1+(「四死球数」+「犠打数」)÷「打数」

となります、

 

 ここで、

(「四死球数」+「犠打数」)÷「打数」=α

と置きますと、

「打席数」÷「打数」=1+α

 

 

この結果、「OPS」の分子は、次のように書き直す事が出来るのです。

 (四死球数)×1
 +
(単打数)×(2+α)
 +
2塁打数×(3+2α))
 +3塁打数)×(4+3α)
 +
(ホームラン数)×(5+4α)

 

 

 そこで、試みに、αを0.10.2の中間の0.15と仮定した値を代入して、「OPS」の分子を計算してみますと次表のようになります。

表:7 OPS」の各項に掛かるべき係数
前掲の省略したOPS 今回の省略しないOPS αを0.15としたOPS
(四死球数)に掛かる係数 1 1 1
(単打数)に掛かる係数 2 2+α 2.15
2塁打数)に掛かる係数 3 3+2α 3.3
3塁打数)に掛かる係数 4 4+3α 4.45.
(ホームラン数)に掛かる係数 5 5+4α 5.6


 

 この表から、本文中での省略算での「OPS」、と今回の省略しないで求める「OPS」を比べますと、各ヒット数の係数が、αが関与する分増大しています。

これでは、「OPS」に対する(四死球数)の寄与率が減じる感じがします。

しかし、各ヒット数の係数に(四死球数がαと形を変えて)が寄与しているので、(四死球数)が多いほど、各ヒット数の係数が増大するので、この分で(四死球数)「OPS」に対して寄与している事とも考えられます。
(この点は本文中に記述しました「強引さの妙」なのかもしれません)

 

 

 次は、「アスレチックス版OPS」を考察します。

 

((四死球数)+(単打数)+2塁打数)+3塁打数)+(ホームラン数))×3÷(打席数)

+((単打数)×1+2塁打数)×2+3塁打数)×3+(ホームラン数)×4)÷(打数)

 

 そして、先と同様にαを用い、分母を「打席数」で共通化しますと、分子は、次のようになります。

 

(四死球数)×3+(単打数)×(4+α)+2塁打数)×(5+2α)+3塁打数)×(6+3α)+(ホームラン数)×(7+4α)

 

ここで、この本文中と同様に、この分子の各項を3で割りますと、各項に掛かる係数は次表のようになります。

(尚、先と同様に、αを0.10.2の中間の0.15と仮定し計算した値も付記しました)



表:8 「アスレチックス版OPS」の各項に掛かるべき係数
前掲の省略したOPS 今回の省略しないOPS αを0.15としたOPS
(四死球数)に掛かる係数 1 1 1
(単打数)に掛かる係数 4/31.33 4+α)/3 4.15/31.38
2塁打数)に掛かる係数 5/31.6 5+2α)/3 5.3/31.77
3塁打数)に掛かる係数 6/32 6+3α)/3 7.5/32.
(ホームラン数)に掛かる係数 7/32.33 7+4α)/3 9/33



 

(補足:2

 本書中、ユーキリス選手に関する記述で、「四球を選ぶことと対戦投手を疲れさせることにかけて、世界記録を打ち立てそうな勢いだった」と評価していますが、対戦投手の球数を増やす能力が「OPS」には十分に反映されていないと存じます。

 

 現在大リーグの先発投手も球数は、原則的に100球で制限されています。

この投手をマウンドから早急に(5回くらいで)引きおろすためには、ユーキリス選手のような打者が貴重です。

 100球を5回で振り分けたら、各回20球です。

2ストライクまで粘って四球で出たら、最低限でも対戦投手の6球は投げさせる事になります。

ファールで粘ったら、もっと投げさす事が出来ます。

 しかし、多くの打者は、2ストライクまで追い込まれると三振が怖いと見えて、2ストライクになる前に、ボール気味の球でも打ちに出て凡退しています。

 しかし、松井秀喜選手は、三振を恐れずに、2ストライクになるのを恐れずに、彼の好きな球を待っています。
そして、打ちたい気持ちをおさえてまでして、四球を選んで出塁しています。

松井秀喜選手のような打者が、多ければ、多くの投手を早めにマウンドから引き摺り下ろせるはずです。

 しかし、この松井秀喜選手のような
芸当が出来る為には、三振が少ない打者が有利です。

そこで、

(四死球数)÷(三振数)

を、次に掲げます。


表:9 四死球数/三振数

選手名

所属チーム

四死球数/三振数

四死球率

三振率

提案するOPS

松井秀喜

ヤンキース

0.865

0.109

0.126

0.543

A.ロッド

ヤンキース

0.600

0.111

0.184

0.625

ジーター

ヤンキース

0.589

0.093

0.158

0.512

デーモン

ヤンキース

0.842

0.091

0.108

0.485

アブレイユ

ヤンキース

0.835

0.156

0.186

0.578

ポサーダ

ヤンキース

0.673

0.137

0.204

0.551

イチロー

マリナーズ

0.714

0.041

0.057

0.472

オルティス

レッドソックス

0.724

0.134

0.185

0.618

チャベス

アスレチックス

0.589

0.108

0.170

0.565


 この表の「四死球数/三振数」で、松井秀喜選手は断然たるトップです。
ここでも、松井秀喜選手の優秀さ(トーリ監督の評価の正当性)が証明されると存じます。

 

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